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東京書芸学園スタッフブログ

好きなものは

2015/07/21

こんにちは。出版部の清藤です。
いよいよ夏本番が近づいてまいりましたが、いかがお過ごしでしょうか。



皆さんは印象に残っている小説の一文というのはありますか。

私には、いつまでも忘れられないほど印象深い一文があります。
それは、坂口安吾の「夜長姫と耳男」という作品の一文なのですが、
坂口安吾という作家はご存知でしょうか。

坂口安吾は、昭和の戦前から戦後にかけて活躍した作家で、
その作品には、「堕落論」や「風博士」、「桜の森の満開の下」など有名なものも多くあります。
「夜長姫と耳男」は坂口安吾晩年の作品です。


そして、こちらが私の印象に残っている一文となります。


「好きなものは咒うか殺すか争うかしなければならないのよ。」



なかなかインパクトのある一文かと思います。
これは、作品の登場人物である夜長姫が耳男に向けて言った言葉です。
この言葉だけでは、意味がわからないかと思いますが、
耳男の今後の成長を願った言葉なのです。


「夜長姫と耳男」は、飛騨のタクミの弟子である耳男が、
タクミの推薦で夜長の長者のもとへ招かれるところから物語が始まります。
夜長の長者のもとへは、耳男の他にあと2人招かれており、
3人は夜長の長者の娘である夜長姫の仏像を作ることとなります。



これ以降の展開は、皆さまに読んでいただきたいので割愛させていただきます。
かわいらしい夜長姫と芸術家・耳男の残酷な中にある美しさの物語となっています。



最後にもうひとつ、私の印象に残っている言葉をご紹介いたします。
先にあげた言葉の前に、夜長姫が耳男に言った言葉です。


「サヨナラの挨拶をして、それから殺して下さるものよ。
私もサヨナラの挨拶をして、胸を突き刺していただいたのに」



幻想的な世界観がとても素敵な作品です。
「夜長姫と耳男」、ご興味がございましたら是非ご一読を。



筆心7月号が6月26日に発送されております。
表紙には、金魚がいます。かわいいです。



加藤僖一先生の巻頭言、紅霧書展のご案内、
そして、書藝選抜展、大阪展の開催報告も掲載しておりますので、是非ご覧ください。

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