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東京書芸学園スタッフブログ

寶泉寺と楠木

2015/11/02

ご無沙汰しています。指導部の村上です。
十三夜も過ぎて秋も深まるこのごろですが、いかがお過ごしでしょうか。


人は年齢とともに花鳥風月を愛でるようになり、文字の順番に「いいなあ」と思うようになって、月に溜め息をつくようになると熟年ということのようですが、月の話を枕に少し。



月といえば十五夜が名月として人口に膾炙していますが、十五夜のひと月後に浮かぶ月は二番目に美しいとして十三夜と称されています。調べてみますと日本の固有の風習で、秋の収穫祭のひとつとも書かれています。


10月後半はハロウィンが街で賑やかですが、十三夜も覚えておきたいですね。


今年の十三夜は10月25日で来年は10月13日だそうですが、一年先では忘れてそうです。



また今年の十五夜の次の日がスーパームーンで、二日間ちょっとした月日和でした。
十五夜、いざよい、たちまち、日本語も月に負けないくらい美しい陰影を放っていますね。




さて、
先日仕事で長くお取引をさせていただいている葛飾区の書道具屋さんに行ってきました。
屋号を亮和堂さんといって、しもた屋が続く家並みの角に営まれる老舗です。硯、墨、筆のことでお店の方とよもやまの話をして帰りがけ、亮和堂さんを出て目と鼻の先に古いお寺がありました。



真言宗 寶泉寺 入口


山門を伺うと書道でいうところの書体、篆書体で「真言宗 寶泉寺」とありました。


漢字には五つの書体があり、楷書、行書、草書、隷書、そして篆書です。


真言宗 寶泉寺



歴史的には一番初めに篆書体が生まれました。
篆書体以前に甲骨文、金文がありますが、五つの書体の中では最初です。
公用文字として使用されましたが、画数が多くて時間の掛かるのが欠点です。
そこで隷書体が速く書くための簡便文字として生まれました。

名が示すように篆書体に隷属するという意味でしたが、いつの世でもスピードが求められるもので、公用文字は隷書体に移りました。


楷書は文字の基本で、崩した形が行書、さらに草書と考えられるので、楷書が早くできたように思いますが、実は隷書からいきなり草書、行書が生まれました。草書は速く書くには適していますが読みにくい欠点を持っています。速くかけて読みやすい文字として行書が生まれ、崩し方や省略が多岐に亘るので、完成体として最後に楷書が成立した、というのがごく簡単な成り立ちです。


隷書は書体の中で一番目立つので新聞名に使われたと昔聞いたことがあります。篆書体はお札の中の印や実印に今でも使われています。一番格の高い文字だからでしょう。



寶泉寺の篆書体を亮和堂さんと一緒に見て、
「なかなかいい文字ですよね」と二人で感心していました。
細身の線ですが、すっきりとした品のある姿をしています。


お寺のお堂を見てください。最初目に付いたのはこのお堂で、風格を感じます。単に古いというだけでなく、屋根の形や窓の形にどこか中国風を感じます。歴史的な形が風格を感じさせるのかも知れません。



真言宗 寶泉寺 お堂

もうひとつ、すばらしく感心したのが山門の脇に聳える楠木です。
見てください。見上げる姿のたくましいこと。生き生きとして、あの有名なアニメに出てきた大木を思い出します。しばし見上げながらテーマソングが耳に鳴っていました。


楠木


楠木



では、今日はこんな「ところ」で失礼します。


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