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東京書芸学園スタッフブログ

書道展見学の巻

2012/08/28

先日、書道展を見に銀座へ出かけました。

1銀座四丁目.JPG

そうです。ここは、過日オリンピックのメダリスト凱旋パレードが行われた銀座通りです。四丁目交差点の写真ですが、当日は50万人の人出だとか、驚きのイベントでした。
そして私は、みゆき通りへと角を曲がりました。銀座は名前のついた小道が縦横に交差していて、この通りも有名ですね。

 

2みゆき通り.JPG

目的の書道展の看板です。
慶山会書道展。
東京書芸学園の先生方が出品しています。

3看板.JPG

 

では、作品をご紹介しながら、すこし私見を加えてみましょう。

4吉田先生詠富士山.JPG

吉田佳石先生の作品。楷書の多字数で、詠富士山です。
楷書を作品にするのは非常に難しく、力のある先生でないと、とても作品になりません。この作品は一点一画が充実しています。力の抜けてしまっている字がありませんね。すべての文字が独立して成り立ち、かつ呼応して紙面にピタリと収まっています。ところどころ墨の「にじみ」が見られますが、含墨して書き継いだ文字です。かすれたら、また墨を含ませて、書き進めている様子がよくわかります。

 

5吉田先生清唏.JPG

同じく吉田先生の二字作品「清唏」
行書で、清を滲ませて、唏でかすれを表現しています。最後に縦画を長く引いて作品を引き締めています。佳石書と、さりげない落款がよい位置に収まっています。

 

6関先生明慎.JPG

関 良法先生の作品「明慎」です。
明は篆書、慎は楷書を組み合わせてまとめています。すみの滲みとかすれ、これを潤渇といいますが、違う書体同士で違和感のないように潤渇を大胆に表現して作品効果をあげています。潤渇のバランスが大切で、均衡を保つ程度に表現しなければなりません。

 

7関先生王昌齡詩.JPG

同じく関先生の多字数作品。漢詩を草書と行書でまとめる、書作品の王道ともいえる手法です。写真に光が写り込んですみませんが、三行が鮮やかに揮毫されています。一見、何気なく書いているように見えますが、全体が整うよう計算しながら書き進める技術が必要です。見事ですね。

 

8北畠先生華亭.JPG

北畠康成先生の作品「華亭」です。
右から読みます。普通横書きは左から書きます。では、これは? つまり縦一字一行の作品と見れば頷けますね。
華を黒々と書き、亭で渇筆を出して、対象美を表現しています。ただ、亭の画数が少ないのとかすれの為に、華の重量に負けないよう落款を添えて補っているところが、此の作の工夫です。

 

9北畠先生雁塔臨書.JPG

同じく北畠先生の作品。雁塔聖教序という古典の臨書作品です。古典は学習にかかせません。創作だけではなく、臨書も作品として書くことで、より深く学ぶと云う意味があります。如何に法帖に迫るか、そこが見所ですね。

 

10臼井先生和顔施.JPG

臼井南風先生の作品で、「和顔施」と書かれています。
にじみが強いので、分かりにくいですが、実作は実線とにじみが区別出来るので、文字を読む事が出来ます。なんて書いているのかわからないでは、書作品にはなりません。当然この作はにじみの表現を意図して書かれています。良質の墨でないと、こうは表現できません。悪い墨だと、ただ真っ黒の塊にしかならないのです。

 

11臼井先生海潮音.JPG

臼井先生の作品「海潮音」ですが、本展中最大の大きさを誇ります。

 

12臼井先生海潮音2.JPG

これを見るとどのくらいの大きさか分かると思います。ちなみに一番右のスーツ姿が臼井先生です。自作解説といったところですね。
実に迫力ある作品で、大きさばかりではなく、盛り込まれる墨の量とその配分がより迫力あるものにしています。三文字が真黒だとしてみましょう。たぶん大きな文字が書いてあるだけになります。
墨をたっぷりと盛り込んで海を書き、潮の荒々しさを渇筆で表し、少し離して音でまとめる。音だけでは、海潮の重量に負けてしまうので、添え書きを足して構成のバランスをとっていると思ういのですが・・・。また、三文字をやや上に収めて下方に空間を持つ事で全体に動きが出、潮の一画が画面からはみ出す事で、より大きさを感じさせます。三字が紙面に収まってしまったら、おそらくこれより小さく感じるでしょう。
この作の見どころはもちろん潮の渇筆ですね。拡大して見てみましょう。

 

13臼井先生潮.JPG

渦潮のごとく、筆が墨が活躍しています。
訪れる方々は、しばし海を眺める如く、作品に見入っていました。

 

長くなりました。
では、このへんで、また他日に。

 

 

 

 

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