2011/07/19
こんにちは。指導部の村上と申します。
東京書道教育会の指導部に所属しています。事務を執る傍ら、書道を教えています。
東京書芸学園の教室や、近くにある明治神宮の若い神主さんに教えています。
世はIT時代です。企業や家庭でしたためる文書はパソコンが筆記します。
会議の文書から、書籍、広告、果ては手紙や年賀状まで機械が活字を印刷します。
四方八方活字の世界ですが、でも町に出て、ゆっくり見まわしてみると、
手書き文字はなかなかどうして、けっこういたるところに使われています。
毛筆で書かれたもの、サインペン、マジックで書かれたものなど様々ですが、
つぶさに見て行くと、これがまた、なかなか良い文字にひょいと出会うことがあります。
思わず感心して立ち止まってしまいます。
ひとつ今日は町の中で見つけた文字を紹介しましょう。
これは何でしょう、マンホールですね。
私の家の近くにありました。
中央に「雨」と書かれています。
雨水を排水する下水のマンホールに表示された文字ですが、いまどき漢字で表示されています。
しかも、これは毛筆文字です。
拡大するとこうです。
漢字は中国で生まれました。ひらがなは日本で生まれました。
ひらがなはともかく、漢字は中国のものなので、特に楷書に日本の風情は全くありませんが、この「雨」の字には、なんとも日本の情趣を感じることが出来ます。
雨にはいろんな表現が日本語にあります。色、風、雪とともに、言葉と意味でその形態や具合による微妙な違いを表現しています。日本の風土が産んだ独特の繊細な表現です。
霖雨、五月雨、といった風情の雨に通じるものがこの文字にあります。文字が上手とかではなく、情趣を伝えている文字には言葉同様の味わいがあります。
もうひとつ。これはなんでしょう。
そう、雲です。
ただ横一筋の雲の写真ですが、これが「一」の字に見えて、柔らかい筆でそっと撫でた跡のようで、
一の中ほどで少しだけ折れて、行書の一を彷彿とさせてくれる自然の造形です。
しばらく姿を留めていましたが、だんだんと薄らいで、やがて蒼い空に溶けてしまいました。
こうして見ていると、周囲にはすてきな文字がいろいろあります。また機会がありましたら幾つかご紹介します。
文字は見るだけでなく、書くことも楽しさの一つですので、次回お会いした時は、プロの技をひとつご紹介したいと思います。では、その時に・・・