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東京書芸学園スタッフブログ

書道展と墨の話し

2012/05/02

こんにちは。
やっと暖かくなりました。これからいい季節ですね。
5月10(木)~13日(日)まで、東京書道教育会主宰「第29回 書藝選抜展」が、東京 明治神宮「参集殿」で開催されます。全国会員が出品する展覧会となりますので、ぜひ、御参観下さい。

 

書道といえば、筆、墨、紙が代表的な用具ですが、今日は墨について少しお話します。
墨というと黒い四角な形で、石の硯で擦って使うものですが、近年は墨汁、専門的には墨液といいますが、良質なものが市販されていますので、昔ながらの固形の墨を使う人は少なくなりました。
 しかし、色の深みを求めると、固形の墨がまだまだ優れているようです。

 

 墨は何で出来ているでしょうか。
 原料は煤と膠です。あの真っ黒い煤を独特の方法で採取して、膠(動物の骨や皮を煮出したゼラチン質)で練り合わせて作ります。混ぜ方や練り方に技術を必要としますので、研究を重ねた熟練者によるものが良質といえます。
 煤は原子でいうと「炭素」です。これ以上変化することがないので、墨で書かれた文字は永久に変化しません。奈良の東大寺の屋根裏の柱に大工さんの落書きが残っていたというのも墨ならではの逸話なのです。当時の人はまさか千年以上たって見つかるとは思ってもいなかったでしょう。笑っちゃいますね。

 

そんな墨は大きく分けて、茶系色と青系色があります。どちらも濃く擦ると真っ黒で見わけはつきまませんが、淡墨といって、薄く擦った墨色に色の差が出ます。
茶系は油烟墨といいます。油を燃やして得た煤で作ります。
青系は松煙墨といって、樹木を燃やして得た煤で作られます。
学校や一般の方が用いるのは油烟墨で、茶系のものが主流です。青系の松煙墨は専門家の人が多く用います。
茶か青か、色に優劣はありません。その人の好みで、また書道作品の場合、作品によって色が選ばれます。

 

どちらにせよ、良質の墨は色合いに深みがあり、毛筆独特の「にじみ」も美しさを放ちます。この「にじみ」については、「古墨」といって、墨は製造後30年以上経つと含まれている膠が痩せて煤の度合いが多くなり、実線とにじみのコントラストがはっきり出るようになります。書道作品では珍重される書線表現なので、「古墨」を求める人が大勢います。

 

拙作ですが、私の作品をご紹介して、古墨の線をご覧ください。
まず、これが使用した墨です。だいぶ使い込んで擦り減っていますが1958年製造の墨なので、54年前に作られた墨です。

村上写真1.JPG

この墨で書いた作品がこの「ぬくもり」という作品です。実線と、にじみがはっきりと分かれているのが見てとれると思います。にじみが温かみを持っていますので、言葉に「ぬくもり」を選びました。

 

村上写真2.jpg

 

古墨すべてが同一ではありません。色、にじみ、ともに墨にも個性があり、千変万化の世界ですので、擦ってみて、書いてみないと分からないのが、楽しみでもあり、難しさでもあります。

 

開催される「書藝選抜展」にも、こういった作品が楽しめますので、見どころの一つです。
では、会場でお会いしたいと思います。

 

指導部の村上でした。

 

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