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東京書芸学園スタッフブログ

町の文字

2013/08/30

ようやく八月が終わりを告げます。
まだまだ暑い日が続きますが、9月の声を聞くと、なにかほっとしますね。
季節は確実に移っています。少し前に、空に鰯雲を見ました。少しずつですが、秋の足音です。

さて、「町の文字」の三回目として、二つお目にかけます。

数年前に京都で撮影したものです。

季節は冬で、清水寺周辺にうっすら雪が降りました。人の気配が絶えた二年坂からの風景です。


文字の一つ目は、鴨川に架かる七条大橋に表記された橋の名前です。


よく橋のたもとに、橋の名前が柱に刻まれていますが、これは実に古風です。
京都らしいといえばそうですが、いったい、いつ頃のものでしょうか。

もちろん、読み方は七条大橋ですが、文字そのものは、こう書いてあります。

「志ちでうおほ者し」

志は音読みで「し」と分かりますが、「でう」はどうでしょう。
古文の授業を思い出して頂ければ「てう」は「ちょう」と読むのでこれは「ぢょう」です。
「おほ」も昔の仮名遣いです。

一番難しいのは次かもしれません。
文字を見ただけでは、たぶん何という文字かわかりにくいと思います。

これは「者」の変体がな、といって、その昔は、ひらがなの他に漢字を崩した文字をあてて読ませました。
今は少なくなりましたが、おそば屋の暖簾によく書かれている文字は「きそば」で、崩した文字の元は「生楚者」です。「者」は「は」と読むので、濁点をつけて「ば」と読むわけです。

橋の表記も「しちじょうおおはし」と読めるというわけです。


二つ目は、京都駅そばの南区東九条の地名表記です。


注目は、烏丸の烏の文字ですね。
今の形と違いますが、決して誤字ではありません。

文字の形、字体は三種類あります。

1. 新字体:現在使用されている漢字の形。1949年に告示されました。
2.旧字体:それ以前に使用されていた漢字の形。
3.書写体:一般にはほとんど使用されません。書道上で使用される歴史上の形。

写真の烏は、この3の書写体にあたる字体です。
三角目の縦線がしたに突き抜けているのが特徴的です。

どうしてこの文字を採用したかは分かりませんが、誤字ではないことは確かです。
土地土地には歴史があるので、名称の由来や表記の文字にも、由来があるのだと思います。

文字は土地土地の中で、人々の中で生きているのですね。
ではまた次回にご紹介します。

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